首都直下地震、津波。東京の地下鉄はほんとうに安全?その現状と対策。(地下鉄問題-1)

大地震は、いつ何時、どんな状況にあろうが容赦なく起こります。
その時どう対応すべきか、イメージだけでもシミュレーションしておくと良いでしょう。
今回は、
「地下鉄に乗っているとき、大地震に遭遇したら?」
を考えていきたいと思います。

一番怖いのはパニックになり、出口に押し寄せること

地震そのものによる被害より恐ろしいのは、人々がパニックになることで起きる災害です。
大勢が一斉に出口に押し寄せれば、必ず圧死者がでます。
とにかく冷静になること。誰かがパニックになって突飛な行動に出ても追従しないこと。これが何より重要です。

地下空間は閉鎖的で、心理的にパニックに陥りやすい環境です。それゆえにパニックによる災害が大きく懸念されているのです。
たった一人が転んでしまっただけで、大惨事になります。
後続の人が転んだ人につまづき、さらに誰かがつまづき、何人も折り重なり下の人は…この先、言うまでもありませんね。
特に地下鉄の場合、ホームから脱出するには必ず階段を使いますから、一層の注意が必要です。

異常な混雑による死亡事故で記憶に新しいのは、2001年、兵庫県明石市で起きた事故。
花火大会終了後歩道橋に人が殺到し、死者11名、重軽傷者247名を出す大惨事となってしまいました。海外では数千人が圧死する痛ましい事故も起きています。

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地下鉄車両は最寄り駅まで動かす決まりに

地下鉄が走行中に一定以上の地震が発生した場合、車両は緊急停止します。
その後、揺れが一旦収まった段階で、車両が動かせる場合は最寄り駅まで移動させます。

東京メトロの場合、
「列車が地震で緊急停止した後、時速5キロの最徐行で近くの駅まで走行し、乗客を駅から避難させる」
都営地下鉄は
「25キロ以下の徐行で最寄りの駅まで列車を動かす」
と規定されているそうです。

地下鉄車両を走らせるための電力は、電力会社から供給を受けています。路線ごとに変電所が複数設置されています。
仮に一部の受電系統が使えなくなっても他の系統から供給されます。なので、電車の運行は確保される仕組みになっています。
もし、電力会社からの供給がすべて止まった場合、駅・電車内の非常灯・放送装置、非常通報装置はバッテリーにより稼動します。真っ暗になったり、構内放送ができなくなることはありません。

また、主要駅には非常用発電機が整備、防災設備の電源が確保されています。
しかし、電車そのものを動かすほどの電力ではありません。完全に全電源喪失となれば車両は動かなくなるのが実情のようです。

車両を動かせない場合は前面の非常口を出て線路を歩く

車両が移動できない場合は乗務員の指示にしたがって線路を歩きます。
その場合、地下軌道内では側面のドアではなく前後の車両正面に付いている非常口から出ることになります。
JRや私鉄の地下鉄乗り入れ車両は、すべて車両正面に非常口が付いているタイプとなっています。
この非常口から出られるのは一人ずつでしょう。ラッシュ時10両編成の列車には2000人くらい乗車しています。前方・後方の両方から脱出したとしても、全員が出るのに30分以上は掛かると思われます。
ゼロメートル地帯の地下でで30分待たされるのは非常に不安ですよね。
しかし、側面ドアから出ても歩行するスペースがなかったり、高圧電流が流れていて非常に危険です。

現在、東京都内の地下鉄では、停電時でも駅まで車両を移動できるようバッテリーの搭載を進めているそうです。
2017年現在まだ一部の路線、一部の車両に限られているようですが順次搭載される予定です。これは急いで対応して欲しいと思います。

ちなみに都内の地下鉄の場合、駅以外に地上への非常出口はありません。
駅と駅の間隔は概ね2キロ以内。近い方の駅を目指せば徒歩10分以内で辿り着けるはずです。
地下空間が完全に暗闇になる可能性はほぼありません。しかし地下鉄軌道内を歩くことになった場合に備え、ポケットライトのようなものを常に携帯しておくと良いでしょう。
万が一のとき、居場所をアピールするのも使えますから。

地下構造物倒壊のリスクは地上の建物より低い

駅まで辿り着いた場合、果たして我先に急いで地上に出る必要があるでしょうか。
一般的に、地上より地下のほうが揺れは少なく、建造物倒壊のリスクも低いとされています。
慌てて地上を目指し、転んでしまったりするリスクを考えたら、その場で様子を見る方が良い場合もあるでしょう。

阪神淡路大震災以降、都内の地下鉄は支柱補強などの耐震工事が進められ、ほぼ完了しているそうです。
想定以上の大地震が起きない限り、地下空間が倒壊して埋もれてしまうことはないでしょう。もちろん絶対無いとは言えませんが、慌てて地上を目指す方がはるかに危険です。

津波による浸水の可能性は、前例がないため不明

さて、恐ろしいのは津波です。
水は低い所に流れ込みますから、東京を津波が襲った場合、低地では地下空間が水没してしまうのでは?と誰もが考えることでしょう。
都内の地下鉄は、これまで局地的豪雨などの水害で線路が冠水した例は1993年の一件のみ。それについてはすでに対策済みですので水害対策は万全だといいます。
しかし、地下鉄ができてから東京が大きな津波被害を受けた経験がないため、その危険性は未知数であると言わざるを得ません。

隅田川河口、佃付近。この川の下を東京メトロ有楽町線、JR京葉線が走っている。

東京は1703年の元禄大地震で津波被害を受けていて、津波が遡上した河川周辺に大きな被害をもたらしたことが記録に残っています。地下鉄は川の下なども走っていますから、そうした場所に水が流れ込まない保証はありません。
実際、東日本大震災では、仙台空港アクセス線の地下トンネルが津波によって水没してしまいました。このことによって、都内の地下鉄が津波被害に遭う可能性に関する議論が盛んになりました。

実際に津波が東京を襲うと、地下鉄はどうなる?

国の中央防災会議は2009年に、200年に一度起きる可能性のある豪雨災害を想定したシミュレーションを行っています。

「荒川土手が東京都北区で決壊」と設定したところ、地上出入り口に1メートルの止水板を設置したとしても、
「都市部22路線130駅・総延長約200キロのうち、最大で17路線81駅・約121キロで改札階まで水没」という予想をはじき出しました。

さらに恐ろしいことに、地下の線路網が水路となって地表に水が到達しない霞ケ関駅や六本木駅も浸水してしまうことが分かったのです。
しかし、だからと言って、救いがないわけではありません。

津波が襲ってくるまでには、さらに地下トンネルを通じて浸水してくるまでには、それなりに時間が掛かります。ほとんどの場合はパニックにならず冷静に行動すれば避難できるはずです。
とにかく、冷静に行動すること。デマに惑わされないこと。それが一番重要です。

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